恋 つづ pixiv。 恋はつづくよどこまでも(恋つづ)動画1話2話3話4話5話6話7話8話9話最終回無料視聴!

#恋つづ #天七 甘酸っぱい

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「あっ、石原さん!天堂先生 呼んできて!! 早く。 」 休憩スペースの カーテンを開けて 慌てて 根岸主任が 叫ぶ その 緊急事態に 何事かと カーテンの向こうを 覗いた 石原こずえも 「え!?あっ!」と 慌てて走り出す。 石原に呼ばれ オレが 駆けつけた時には 床に座り込み 長椅子に ぐったりと 倒れ込んでいる 七瀬に 主任が 「勇者ちゃん!わかる? 勇者ちゃん!!」 呼びかけながら 脈をとっているとこだった。 「七瀬!?どうした!!」 慌てて駆け寄り 「先生!救急に 連絡入れます!!」 そう言って 立ち上がる 主任と入れ代わり 肩に手を掛け 口元に 顔を近づける 息はしてる 「七瀬!七瀬!!」 でも 呼びかけ反応しない 「誰か ストレッチャー 持ってきて!!」 この時 まさか …こんな事になるなんて 誰も想像して いなかった 根岸主任の 話に よると 偏頭痛がする そう言って 鎮痛剤を 服用した 七瀬を 休ませて しばらくして 様子を 伺うと 意識を失い 倒れ込んでいた…と。 服用した 鎮痛剤は 普段から 使用している 一般的なもので 頭部CTと 脳波の検査結果は 以上なし。 心電図も 正常な波形を刻み続け 血液検査の結果 白血球は 正常値 軽い低血糖と脱水が 見受けられ 点滴治療を受けている 何らかの 原因で 意識消失している そう診断された 今朝 一緒に 出勤した時は いつもと 変わりない様子だったのに 何か 見逃していないか 頭の中を 必死に 巡らせるけれど 何も思い当たらない。 まさか 2年も前の 事故の影響が 今頃? 何も 分からないまま… 七瀬の手を握り 不安な 一夜を過ごした。 バイタルチェックに 現れた 沼津に その場を任せ 自分の 業務の為 一旦 その場を離れる。 七瀬の 意識が 戻ったと 連絡を受けたのは オレが 傍を離れてから 2時間程後のこと すぐに 駆けつけてやりたいところを あいにく 外来診療中で それも 叶わない 焦る気持ちを抑えて 黙々と 業務をこなし 慌てて 駆けつけた 病室の前で 根岸主任と小石川先生に 入室を止められる 「天堂くん、今 検査済んで 診察中だから、 落ち着いて?」 「はい。 」 小石川先生の 表情から 何か 重大な事が あったのを察知して 唾を飲み込んだ。 「検査の結果に 異常は無かったんだけどね、 一過性全健忘の 症状が見受けられる。 」 「え?」 「記憶が 曖昧なんだ。 」 大抵 一過性全健忘は 大脳にある 記憶や学習能力に関わる 脳器官の 機能が 一時的に ショートし て 起こる事が 原因と考えられているが 詳しくことは 解明されていない。 てんかんや 脳梗塞など 重大な疾患は 認められず 過度なストレスや 鎮痛剤を服用した事による 一時的な ものだと思われる との 診断を受けた…との事。 脳神経内科の 医師からの 面会の許可か やっと出て 足を踏み入れる ベッドの上に 起き上がり 不安そうに こちらを見る 七瀬と目があって 「七瀬!」 急いで 駆け寄り 愛しい妻を 抱きしめる。 「きゃっ。 」 驚いた 七瀬が 小さく 悲鳴をあげた。 「七瀬?」 顔を 覗き込むと 真っ赤になって 身体を強ばらせらせる。 様子が変だ。 小石川先生と 脳神経内科の 医師が顔を見合わせた。 「あ、あの…離してください。 恥ずかしいです…」 俯いて 小さな 声で呟く 七瀬が 両手で オレの身体を押し返した。 小石川先生が オレの肩に 手を掛け 「天堂くん。 七瀬さん ここ数年の記憶が無いんだよ。 」 そう言った。 「は?」 ここ数年? 理解の出来ない 様子のオレに 脳神経内科の医師が 七瀬に 向かって 「もう一度 お名前と 年齢 教えてくれる?」 そう 優しく 語りかけると 「え…っと。 佐倉 七瀬 17歳です。 」 その答えに 脱力して 掴んでいた 手を思わず離した。 小石川先生が 「七瀬ちゃん、この人 わかる?」と 呆然と 立ち尽くしている オレを 指さす 「え…、」 みるみると 真っ赤になる 七瀬が 「…知ってる。 」と 小さく呟いのが 聞き取れて ほっ…と 胸を撫で下ろした が 「神社の前で 助けてくれた …人。 」 その言葉に 耳を疑った。 軽く握った右手を 口元に当てて たどたどしい物言いの 七瀬の 様子は 明らかに いつもとは違う。 今 目の前にいる七瀬は 出会った時のオレ それ以外の記憶はなく 自分が 看護師で あること 留学したこと オレと 結婚していること 全ての記憶が 抜け落ちて 17歳の 高校生だ。 いちよう 本人に説明はしたけれども 完全には 理解しきれていない。 「あの…おかぁさんは?」 小石川先生の 白衣を 小さく掴んで オレを避ける仕草をする 「どうしたの?天堂先生 怖い?」 顔を背けたままの 七瀬の耳が 真っ赤になって 小さく 「だって…恥ずかしい…。 」そう呟く。 「恥ずかしい?どうして?」 七瀬は 答えない。 〘 ちょっと 席 外して 〙 そう 小石川先生に 目で指示されて 渋々 病室の外へ しばらくして 退室してきた 小石川先生が 笑いを堪えている 怪訝な目で見る オレの耳元で 「七瀬ちゃん 天堂くんの事 好きなんだって!」 そう言って 笑う。 オレを 好き? 七瀬が オレと出会った 記憶があるならば オレに憧れて 看護師を目指した 今 まさに あの時 気持ちなんだろうか? 「どうする?いいね~乙女の告白。 」 「どうするって…。 」 一過性全健忘は 24時間以内に 症状が改善する事が多い 普通に接していれば そのうち 思い出して 元の 24歳の七瀬に 戻るだろう。 七瀬の ベッドサイドへ ゆっくり近づいて 姿勢を低くし 優しく 語りかける 「七瀬? お母さんには オレが連絡するから」 その言葉に うなづく 「でもね 鹿児島には 帰れない。 忘れちゃったと思うけど 七瀬は 今 オレと暮らしてる。 」 「えぇっ!!なんでですか!?」 「 なんでだと思う?」 真っ赤になって 少し 目に涙を溜めた 七瀬の様子が 可愛くて つい 意地悪っぽく 上目遣いに 七瀬の 目を見つめる 「…わかんないです。 」 ベッドの上に 三角座りをして 毛布で 顔を隠しながら ちらりと こちらを見る オレは わざと 身体を近づけて 耳元で 囁く。 「七瀬は オレの お嫁さんになったんだよ?」 目を見開いた 七瀬が そのまま パタンと ベッドへと 倒れ込んだ。 「天堂先生!からかい過ぎですよ。 」 様子を見に戻ってきた 根岸主任に 咎められる 「どうします?一応 退院の許可は 出ましたけど、この 調子ですし このままここで…」 「連れて帰ります。 」 「「え!?」」 主任と 七瀬が 同時に 大声をあげた。 「七瀬。 自宅に戻った方が 早く 色々 思い出すかも?帰ろう 一緒に。 」 「え…でっ、でも。 」躊躇する七瀬に 「帰ったら 写真とか たくさんあるよ? 見たくない?結婚式の写真。 」 「見たいです!!」 ベッドに 起き上がり 身を乗り出す 「じゃ!決まり。 主任 お願いします。 」 七瀬の 支度を 根岸主任に 頼んで 自分の業務を 何とか都合をつけるべく 医局へと 一旦戻った。 小石川先生に 退勤の許可を貰い 七瀬を 迎えに戻ると 着替えを済ませた 七瀬が 病室前の洗面台の鏡で 自分の姿を見つめて 泣いている 「どうしました?」 小声で主任に 尋ねると 「大人になってる…って 混乱してます。 」 そう言って うなづく。 そりゃ そうだろうな… 七瀬の中では まだ 高校の 自分の姿しか なかったんだろう そっと 近づいて 背後から 鏡の中の七瀬に 尋ねる 「ショック?」 「…はい。 」 「どうして? こんなに 綺麗になったよ?」 「…………。 」 だって 何も覚えてない…。 ポツンと 呟いた 七瀬の 手を握ると ビクッと 身体を震わせる。 そうか…。 オレとの 記憶が無い 七瀬は 手を繋ぐのも これが 初めて そう思うと 何だか こちらまで 不思議な気分だ。 真っ赤になって 手を引っ込めようとする七瀬の 手を 「ダメ!離さないから。 」 そう言って きつく握って 病院を 後に する。 眩しい光に 目を細めた 七瀬が いつもと変わらない 川沿いの 風景を まるで初めて見るような 顔をして 眺めている その様子を伺いながら 口元が緩む。 そうか 今の七瀬に とっては 初めてなのか… 繋いだ手を 時折見つめて 頬を赤らめるのも 可愛い。 七瀬の 記憶が戻るまで このまま もう一度 初めから 始めてみるのも楽しいかも。 ふふっ、と 笑った オレを見上げた 七瀬に 微笑んで きつく握った手を 優しく絡め直す。 「お腹へってない?美味しいもの食べに行こう」 そう言って 初デートへと 繰り出した。

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#恋つづ #天七 甘酸っぱい

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みなさんこんにちは、南河です。 緊張すると味覚がマヒするって本当だったんですね…知りませんでした、看護師失格かな…。 目の前の天堂先生は普段の数倍不機嫌で、ウーロン茶のグラスをテーブルにドンッと置くだけで僕は跳び跳ねる。 先生が不機嫌な理由は同じ店内で同窓会に参加している佐倉さん…に、やたらとアピールをしている男たち。 あぁ…旦那さんが睨んでますよ、と伝えてあげたい。 「同窓会?」 「はい、こっちに出てきてる人達で…急に決まって」 スタッフステーションでそんなやり取りを見ていて『わかった…飲み過ぎるなよ?』とすんなり承諾した天堂先生に『大人の余裕…やっぱかっこいい』なんて思っていると佐倉さんがいなくなった瞬間『南河』と、名前を呼ばれ『はい! 』と返事をすれば爽やかなのに目が笑っていない笑みを浮かべ肩をポンッと掴まれる。 「夕飯、奢ってやる」 「え?」 そして退勤後、ズルズルと連れていかれた場所は『偶然』にも佐倉さんが同窓会を楽しんでる居酒屋だった。 席は離れてるから佐倉さんは気付いてないみたいだけど、天堂先生はめっちゃ見てる…。 『お前は気にせず飲め』と生ビールを注文してくれて、つまみも『好きなの食え』と言ってくれる、それだけ聞けば凄くかっこいい上司なのに…絶対に佐倉さんの監視をカモフラージュするために僕を連れてきましたよね…。 でもまぁ…それでもやっぱ憧れるぐらいかっこいいけど。 「無駄に笑顔振り撒くな」 「いや、同窓会に仏頂面で参加する人なんていな…すみません」 さっきから天堂先生の愚痴?に返事をすれば睨まれ、返事をしなければ『聞いてんのか?』と睨まれ…大好きな茄子とポテトの明太子マヨチーズ焼きの味がしない。 せめて沼津さんも誘ってくれてたら…と思う。 「…お前は何で看護師になったんだ?」 「…え?」 急に天堂先生に質問され返答が遅れれば『遅い』と睨まれ『えっと…ありきたりな理由です…小さい頃入院した時にお世話になった看護師さんが、男性で…男の人の看護師もかっこいいなぁって……すみませんこんな理由で』と謝れば、フッと天堂先生が笑った。 「充分立派な理由だろ…七瀬は俺に会うために看護師になったしな…理由なんて人それぞれだ…大事なのは『目指した理由』より『続ける努力』だ」 「続ける努力…」 枝豆を食べる姿すら絵になる天堂先生に『子供の頃入院してたんなら、小児科の看護師がよかったんじゃないのか』と聞かれ、確かに最初は小児科希望だったけれど循環器内科での研修でたくさんの事を学んだし、何より天堂先生と仕事がしたかったから…『最初は小児科希望でしたけど、天堂先生の下で学びたいと思いました』と正直に話せば『物好きなのはお前と七瀬ぐらいだな』と笑った。 2時間ほどして、佐倉さんが帰ろうとしたところを『二次会行こうよ』と肩を抱く同級生に、さすがの天堂先生も立ち上がりズカズカと輪の中に入っていく。 「七瀬、帰るぞ」 「えっ!?せんせっ!?」 佐倉さんはメチャクチャ驚いてる…ってか他の人も。 旦那さんだとわかると女性からは黄色い声、男性からは敗北感しか感じない。 そりゃあの天堂先生に勝てるわけがない。 『妻がお世話になってます…明日も早いので今日はこの辺で…』と爽やかに挨拶してるけど、天堂先生…明日佐倉さんと2人揃ってお休みですよね…。 「南河、帰るぞ」 「え!?南河くんまで!?何で!?」 そりゃ驚きますよね…『えっと…あの…』と答えようとする前に『飯奢ってやる約束してたからな…コイツが選んだ店がたまたまここだった』と言う天堂先生に『そうなんですね! 凄い偶然! 』と笑う佐倉さん…この夫婦には一生勝てそうにない。 「じゃあね、南河くん! 気を付けてね! 」 途中から帰る方向が違うので天堂先生にお礼をして、手を振ってくれる佐倉さんに振り返す。 『南河…』と呼ばれ思わず背筋を伸ばせば『…さっき言ってたやつ…来週の火曜ならいいぞ…』と言われ『さっき?』と首を傾げてしまったが思い出した。 居酒屋で料理を食べてる時に『七瀬が作った方がうまい』と言う天堂先生に『食べてみたいです、佐倉さんの手料理』と命知らずな発言をしたのだ。 「いいんですか!?」 「…それまでに仕事でミスしなければな…」 まさかのお誘いに、『頑張りますっ!! 』と返事をすれば『うるさいバカ』と怒られた。

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#恋つづ #天七 魔王の付き添い

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看護師として働き始めて、早一年。 あっという間で、濃密で、目まぐるしくて…そして幸せな毎日にやっと慣れ始めて、少し気の緩みもあったのかもしれない。 「寒っ…」 外は真っ暗で、時計を見ると午前1時を指していた。 普段はちょっとやそっとじゃ起きない自分が夜中に悪寒で目覚めるなんて、と思いベッドサイドにあった体温計に手を伸ばす。 こころなしか喉にも違和感がある。 「うそっ、38. 患者さんに迷惑がかかるのはもちろん、同僚にもしわ寄せがいく。 なんとか熱を下げるべく、元気だけが取り柄の自分には要らないか、と思いつつも、曲がりなりにも看護師なんだしこれくらい持っておこう!という謎の使命感に苛まれてストックしておいた市販の解熱剤を飲んで、朝には下がることを祈りながら眠りについた。 「37. 」 ただでさえ病院には免疫力の落ちている患者さんが多い。 もし下がらなければ出勤してはいけないと思っていたけど、これなら大丈夫。 予防的に解熱剤を飲んでいつも通りに出勤した。 少し喉は痛いけど、普段通りに働ける気がした。 先生と晴れて恋人同士になってからは、なるべく一緒に出勤するようになった。 そうでもしなければプライベートで顔を合わせる時間がほとんどないに等しいのが、この仕事。 もちろん、出勤時間が決まっている私とは違って、先生は緊急オペだの学会の準備だの早く家を出ることも多い。 そんな時は決まって知らせてくれる。 朝、スマホを見るとメッセージが届いていた。 「悪い、緊急で呼び出された。 今日は先に行く。 」 いつもは残念に思うことも、今日ばかりはほっとした。 ただでさえ忙しくて、働き詰めの先生に余計な心配はかけたくない。 なにかと鋭い先生にどうやって気づかれないように隠そうかと考えていたけど、勤務中だけなら誤魔化せる、と安堵した。 [newpage] 出勤すれば必ず顔を合わせなければならない先生とも、普段通りに、でもなるべく関わらないようにした。 "気づかれませんように" そんな願いが届いたのか、先生はいつもと変わらず。 なんとか今日は乗り切れそう、薬って偉大だなぁと思いつつ、お昼に飲んだ分の効果が切れそうになってきた夕方、勤務終わり前の最後の点滴の準備をしていると主任から声をかけられた。 「勇者ちゃん、なんか耳赤くない?大丈夫?」 今日1日お昼ご飯以外はマスクを外さないようにしていたのに、さすが主任、鋭い。 「あはは、ちょっと夜中熱っぽくて。 あ、でも大丈夫です!!朝には下がってたので!」 耳が赤い、そして顔も火照ってきたということは、熱が上がってきているのかもしれない。 「えぇっ?大丈夫なの?仕事は終わりそう??残りそうなことがあれば手伝うから、今日は早く帰って休んでね。 病院には行ける?」 さすがに自分の働く病院は受診したくない。 というかしない方がいいのはうちの病院では暗黙の了解だ。 「はい!大丈夫です!ご心配おかけしてすみません。 早く終わらせて、近くの病院に行ってから帰ります。 あと、このことは天堂先生には…」 「わかった、言わないのね?そのかわり、残業しないで帰って、早く治すこと!」 さすが主任、言わなくてもわたしの考えてることなんてお見通し。 優しい主任に感謝しながら、いつもより早く勤務を終えた。 「はあ…体調管理には気をつけてたんだけどなぁ。 先生に気づかれないうちに早く帰ろう。 」 前に風邪をひいて以来、それなりに気をつけてきたつもりだった。 こんなの知られたら魔王になんて言われるか。 バカは風邪ひかないんじゃないのか?とか自己管理がなってない!なんてお説教されるに決まってる。 でもやっぱり、先生に会いたいなぁと思いつつ、ロッカーで着替え始めると、また夜中に感じたような寒気が襲ってきた。 仕事中ってアドレナリン出てるのかな、と勤務を終えた途端にどんどん鉛のように重くなる体を引きずりながら病院を出た。 [newpage] 「遅い!…行くぞ。 」 職員入り口を出たところでなぜかいつもの黒いコートを着た先生が立っていた。 はあ、今日もかっこいい…じゃなくて。 「へっ?どこに?」 「病院に決まってるだろ。 」 「え、なんで先生が…仕事は…?というかなんで病院?先生体調でも悪いんですか?」 いつもはこんな時間に仕事が終わっているはずがない先生がいることに心配になって早口で訊ねると、あからさまに何言ってんだ、と怪訝な顔をされた。 「はぁ?俺はどこも悪くないし仕事は終わらせた。 病院に行くのはお前だろ。 …ったく、気づかないと思ったのかこのバカ。 いつからだ。 」 どうせ市販の薬でも飲んで誤魔化してたんだろ、と言われ、そこまでお見通しなんてもはや何も隠せていない。 「あはは、うまく隠せてると思ったのに」 「この俺に隠し事しようなんて100年早い。 」 「ですよね〜。 」魔王を甘く見ちゃだめだ。 そこまで症状が酷いようには見えなかった、しかもどうせもう熱は下がってるとかなんとか言い訳しそうだから何も言わなかった、と先生は付け加えた。 ああ、分かってくれてたんだ、という思いと私のことをちゃんと見てくれてるんだということに、じーんと胸が熱くなる。 「早くしろ。 」と言いつつも、いつもはスタスタと先に歩く先生が、今日は歩幅を合わせてくれている。 言い方は素っ気無いけど心配してくれているのがわかる。 幸い歩いて数分、家までの間にある医院だ。 悪寒はとまらないし身体は辛いのに、心はとても温かい。 病院で改めて測ると、なんと38. 「上がってる…」道理でしんどいはずだ、と思いながら先生を見ると、覗き込んできた体温計にうつった数字を見て、今にもバカ!と言いそうな顔で睨んできた。 あはは、と苦笑いでなんとか誤魔化そうとした時、不意に先生の手が私の肩の後ろに回ったと思った、その瞬間。 先生の膝の上に私の頭が乗った。 これは…膝枕?!ここ病院、と周りを見渡すも、時間が時間だけに患者はまばらで、誰も咎めるものはいない。 びっくりして先生を見つめると、「いいから、呼ばれるまで寝てろ。 」と私の肩に置いた手はそのままに、自分のiPadを見始めた。 嫌な寒気で震えが止まらない私に、自分の上着をかけて。 正直、座っているのも辛かったけど、もういい大人、待合室のソファに寝転ぶなんてできない。 小さい頃、同じように母にしてもらった記憶はあるけど、まさか先生にしてもらう日が来るなんて、熱で妄想が止まらないだけなんじゃないかとさえ思えてくる。 とりあえずインフルエンザだけは否定してもらい、診察を終えた。 「座ってろ。 」そう言って先生がお会計を済ませてくれて、歩いてもたった15分ほどで着くのに、わざわざ呼んでおいてくれたタクシーで家路に着く。 至れり尽くせりすぎて、もう何が夢で何が現実かわからない。 [newpage] 「先生、朝から緊急オペでお疲れなのに、こんなことに付き合わせちゃってごめんなさい。 今日は一緒に来てくれてありがとうございました!実は1人で病院行くの、心細かったんです。 もらった薬飲んで寝ます。 幸い明日は夜勤なので!それまでになんとかします!!先生も早く休んでくださいね。 」 なんだかさっきのことを思い出すと急に恥ずかしくなってくる。 矢継ぎ早に言いたいことだけ言って、自分の家の鍵を取り出そうとしたが、その手を引っぱられなぜか先生の家の前に連れて行かれた。 「早く入れ。 」 「え、でも移しちゃ悪いですし…今日は帰ります。 薬飲んで寝てれば治り、」 そう言いかけたところで口を塞がれる。 ああ、これじゃ余計に熱が上がる。 「俺はそんなにやわじゃない。 移るならこれでもう移っただろ。 ごちゃごちゃ言ってると無理やりでも、」 「わ、わかりました、入ります、入りますから!」 もうこれ以上は心臓がもたない、しかももう体力が限界だ。 フラフラした身体を、いつかの風邪を引いたときのように支えてくれた。 あの時と違うのは、先生が、私の彼氏、だということ。 家に入った途端、流子さんに挨拶する暇もなく先生の部屋のベッドに押し込まれ、しばらくすると流子さんが用意してくれていたであろうお粥が部屋に運ばれてきた。 「食べれられるか?」 食欲はあまりないけど、せっかく作ってくれたものを食べないなんて、できるわけがない。 「あの、先生?あーんなんて、」 「するかバカ。 」 断るの早っ、病人にはもう少し優しくしてくれてもいいのに。 いや、もう十分優しいか。 「もうっ、わかってますよーだ。 いただきます。 」 「無理しなくていい、食べられるだけ食べて、さっさと布団に入れ。 」 その言葉に甘えて、1/3ほど食べたところで薬を飲んで、いそいそと布団に入らせてもらう。 じゃないと本気で怒られそうだ。 魔王は怖い。 食べている間にお風呂に入ったのか、先生が部屋着になって戻ってきた。 いつ見ても、どんな服を着ていても、本当に様になる。 こんな人が自分の彼氏…なんて、左を向いてベッドから先生を見ていると、 「なんだ、ニヤニヤするな気持ち悪い。 」とぶっきらぼうに言いながら、不意に隣に入ってきた。 気持ち悪いって、仮にも自分の彼女に言うセリフ?なんて思う暇もなく。 いや、先生のベッドだから先生が寝て当たり前だけど、え?一緒に?!と混乱している頭をなんとか整理しようとする。 そりゃ、先生のベッドに入るのは初めてではない。 それはいつも酔っ払って覚えてないまま、迎えにきてくれたその足で、気づけば先生の部屋にいて。 当の先生はリビングでコーヒーを飲んでいる、という朝を迎えたことは、確かに何度かある。 ベッドに入るなり先生は右を向いてきて、当然、向かい合うことになる。 先生の左手がそっとわたしの背中に回って、抱きしめるわけでもなく、ただそれだけ。 空いている右手で、額に触れられる。 「まだ熱いな。 」 先生のせいで熱が上がります、とは言えず、固まっていると 「早く寝ろ。 」と今までより少し優しい声で言われ、頭を撫でられた途端、瞼が重くなってきた。 ああ、幸せってこういうことを言うんだ。 夢でもいい、もう少しだけ、この時間が続けばいいのに。 そんなことを思いながら目を閉じると、薬の影響か、それとも先生が隣にいる安心感からか、あっという間に眠りについた。 まだ完全に起きる少し前、優しく、そして確かめるようにそっと、額に触れられた気がした。 でも、心地よい感覚にもうちょっとだけ、と大好きな先生の匂いに身を委ねた。 目が覚めると、身体はずいぶん楽になっていて、計らなくても平熱とわかる。 時計の針は9時を指していた。 夢じゃ…ない…?寝過ぎてしまった…と思いつつ、当たり前だけど既に隣に先生の姿はなくて、スマホを見るとメッセージがきていた。 「起きたら連絡しろ。 」 こんな短いメッセージでも、十分すぎるくらい先生の優しさは伝わってくる。 ちゃんと食べて寝てろ、と薬のそばにあったメモを見ながら、あったかい気持ちになって、不謹慎だけど、たまには風邪も悪くないと思うのだった。 [newpage] いつも通り、元気よく夜勤に向かうと、日勤メンバーからニヤニヤした目で見られる。 「ど、どうされたんですか、みなさん…」 「どうやった〜魔王の看病は?」 真っ先に声を上げるのはもちろん沼津さんだ。 熱があることは主任しか知らないはず… 「へっ?!な、なんでそれを」 昨日のことを思い出し、頰を染めながら焦っていると 「待合室で、膝枕、やろ?」 魔王もやるなぁ〜と沼津さんがうんうん、とうなづいている。 どこからそんなことが漏れたのか、と考えていると、 先生がやって来て、さも当たり前かのように額に触れられて熱を確かめられる。 「薬は?」 「あ、はい、飲みました!もう完全復活です!!」と勢いよく答えると、 先生の表情が一瞬ふっと緩んだ気がした。 「それより、先生、移ってないです、よね?」 昨日一緒に寝たし、なんならキ、キスまでしちゃったし…と思い出して赤くなりながら訊ねると 「ばっ」と先生が睨んできた。 えっなにかまずいこと言いました…? と思ったが時すでに遅し。 呆気にとられる周囲に見向きもせず、 "夜勤中の仮眠、ちゃんと寝ろよ"と、 あの伝説の「俺の彼女だから」宣言の時と同様に、頭にぽんっと手を置いて去っていった。 「へぇ〜勇者、移るようなこと、したんだ?」と周囲からさらに昨日のことを問い詰められたのはまた別のお話。

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